翻訳者の独り言17(2016年2月8日)
付加モル数
久しぶりの更新。10か月近く何も書かず反省しきりです。
ところで、付加モル数とはわかりやすくいうと、ある化合物の分子に別種の分子が複数個結合し
て(付加して)新しい化合物ができた場合に、結合した別種の分子の個数を意味する用語です。
付加モル数を英語で表現すると、“number of moles added”となります。
駆け出しの翻訳者だったころに、英文の有機化学の本を読みあさって化学の専門用語を探したこ
ろを思い出します。30年前はインターネットの環境が整っていなかったので今のように大量の情
報源を駆使できず、空き時間にひたすら文献を読んで自分用の用語集を作ったものです。
この“number of moles added”もそうして調べて頭の中に入っていたのですが、先日仕事中にふ
と確認したくなってインターネットで検索すると、ありましたねえ。下記のサイトに。
https://groups.google.com/forum/#!topic/honyaku/_O-gqHkpJAc
そこでは、こんなふうに書かれていました。
On 04/11/15 12:45, Warren Smith wrote:
> 付加モル数
> Is the following talk-around correct (for the first example, above)?
> "...with l and m representing the average number of moles of oxyethylene
> groups added" (This seems quite verbose... There ought to be a shorter
> way to say this....)
Yes, "number of moles added" is correct for 付加モル数.
Herman Kahn
Kahnさんありがとうございます。
英語を母国語とする人も、自分の知らないことをどういったらよいか分からない場合は結構あるの
です。日本語を母国語とする人の場合と同じことなのですね。
翻訳者の独り言17(2015年4月18日)
統語法
英語を母語としない人が書く英文は、書く人の英語統語法の運用能力によって文の完成度が大き
く異なります。統語法とは、それぞれの言語で決まっている単語の並べ方で、これがでたらめであ
ると出来上がった文の意味は不明になります。
しかし、外国語の統語法をよく理解して複雑な文を正しく作れるようになるのはやさしいことで
はないでしょう。自分の母国語と外国語の統語法が大きく異なる場合は特に難しいでしょう。統語
法が怪しい英文の例には、英文の単語が母語の統語法に従って並んでいるものがあります。
こんな現象は日本人の書いた英文だけでなく、他の英語を母国語としない国の人々にも起こって
います。かつて会社勤めをしていた頃に目にした国外からのメールにはそのような例が結構ありま
した。
では、どうすれば英語の統語法がわかるようになるのでしょう。一つは英語の統語法について解
説した本を読むことです。インターネットのサイトにも英語の統語法について説明したものがあり
ます。
それと共に実践すべきことは、英語を母国語とする人の書いた文章を読むことです。特に、技術
分野の文章は論理的な説明文ですから、英語の論理展開を追いかけながら読むうちに、英語の統語
法がわかってくるというすばらしい効果をもたらします。この場合、書かれた内容を英語のままで
理解するように努力してください。それによって、英文の読解力も向上します。
翻訳者の独り言16(2015年4月11日)
ウェブページの英文
インターネットの各種英文サイトから情報を得るには、そこにある英文を読むか日本語に翻訳す
ることになります。
無料で使用できる翻訳ソフトが付随しているサイトや日本語版ホームページのあるサイトもあり
ますが、翻訳ソフトで処理した結果が意味不明な日本語文だったり、英語版と日本語版のホーム
ページの内容がきちんと対応していなかったりで、必要な情報を確認できないこともあります。
英文のウェブページから情報を得るのに苦労しておられる方のために、必要な情報をコンパクト
に抽出して御提供することを考えた結果が、「英文要約」のサービスです。
このサービスで大切なのは、ご依頼いただく方にとって本当に必要な情報をお届けすることで
す。そのためには情報を求められるご事情までよく理解する必要があります。困っておられるこ
と、解決されたいこと、実現されたいことなど何でも伺って、時にはご一緒に考えさせていただく
こともあるのではないかと思っています。
翻訳者の独り言15(2015年4月10日)
英々辞書を使う理由
私は英単語の語義を確かめるために、Merriam-Webster’s Collegiate Dictionaryをコン
ピュータに搭載しています。専門用語は他の様々な手段で調べますが、英語の基本単語の意味や
用法を確認するのにはこの辞書が役立ちます。
単語の意味を説明している英文と用例とを読むと、その単語が英文の中で使われている状態が
具体的に理解できます。似た内容を表わす単語であっても、使い方に区別(良い意味と悪い意味
など)のある場合があります。そのような相違も、この辞書を読むと理解できます。
自分の持つ英語の語彙が少ない段階では英々辞書の使用がかなり負担になりますが、時に英和
辞書の助けを借りながらでも辛抱強く読む力をつけるしか仕方がありません。まさに、「ローマ
は一日にしてならず」です。
翻訳者の独り言14(2015年4月6日)
英訳の注意点
訳語の統一
英訳する際に気をつける点は、第一に訳語の統一です。日本語文において同一の内容が異なる
語で表現されている場合でも、英訳文では同一内容であれば同じ訳語で表現します。技術文書も
含め内要を的確に伝えるための実務文では、訳語(用語)を統一することが読み手の誤解やそれ
に起因する問題を防ぐために不可欠です。
不要な接続詞
不必要な接続詞は訳さないことです。日本語の文頭に置かれた順接や逆接の接続詞には、なく
ても文脈がつながるものがけっこうあります。単に読み手の注意をひくためだけの接続詞やそれ
に類する語句は省いて訳したほうが理解しやすい英文になります。
日本語文の中には、逆接の関係ではない内容の文を逆接の接続詞でつなげたものもあります。
文を書いた人が、内容を論理的に整理できていないからでしょうか。そのような場合に、接続詞
を訳出すると、わけのわからない英文になります。
文章の論理構成
技術文書やビジネス文書は、まとまった報告や用件を伝えるものですから、普遍的な論理構成
にもとづいて書く必要があります。最初に要点を示し、それに続いて論理的に説明を述べるのが
最も効率よく情報を伝達する文章作法です。このことを念頭において英訳対象となる日本語文を
読み、要点を見つけだし、それを中心において英訳文を考えると、論理的な構成の訳文が書けま
す。
翻訳者の独り言13(2015年4月1日)
私の英訳方法その3(文章を書くのはしんどい仕事)
前回の内容を読まれて、私が英文をホイホイ書いているように感じられたかもしれませんが、
文章は楽には書けません。自分である程度納得できる文章(日本語も英語も)を書くことは、い
つまでたっても気骨の折れる仕事です。
主語の選定も含め、読み手に誤解されることのない論理的な英文を書く力をつけるための方法
は、単純なことですが論理的に書かれた良質の英文を英語のままで内容把握しながら読むことで
す。文章を書く能力は読解力に比例します。英文を頭の中で日本語に訳さなければ内容把握が出
来ない状態では、自然な英文を書く力はついていません。日本語での読み書きを考えられれば、
容易に想像できることでしょう。
基本的な単語は英々辞書で調べるようにします。お勧めできる辞書は、Merriam-
Webster’s Collegiate Dictionaryでインターネットで入手できます。また、Merriam-
Websterのサイトでも単語を調べることができます。
翻訳者の独り言12(2015年3月27日)
私の英訳方法その2(頭の中では)
日本語を英語に翻訳する際には、逆の場合もそうですが、不自然な訳文にならないことを心が
けます。
そのためには、英文の主語を適切に決めることです。日本語文の主語を英訳文の主語にすると
英文として不自然になることがあります。日本語文では主語が省略されていることもありますの
で、いずれの場合も日本語文の意味をよく理解して、その内容を適切な英語表現で伝えるのに適
した主語を考えます。
英訳の際に、適切な主語が決まれば後は楽です。その主語に合う動詞の候補は容易にみつかる
でしょうし、動詞が決まれば修飾関係も自ずと決まっていきます。
また、日本語文が長すぎたり、内容が多すぎるときは、幾つかの文に分けて英訳したほうが読
みやすい訳文になります。反対に、短すぎる文がいくつも並べられている場合には一つにまとめ
たほうが簡潔で読みやすくなります。
英訳文の段落や全体を通して読んだときに、文の内容が理解しやすいか否かを検討することも
重要です。全体を読んでみて何を伝えたいのかよく判らない文章は、説明不足があったり、論理
構成に不備があったりしますので書き直します。
翻訳者の独り言11(2015年3月26日)
私の英訳方法その1(翻訳の準備から完成まで)
1. 日本語文全体を読む
始めに日本語の原文全体を読んで、文章の内容と著者の意図および文章の背景事情を把握しま
す。この段階で、理解しにくいところや確認したいことがあれば著者に尋ねて確かめます。
2. 専門用語調査
次に、文章中に出てくる専門用語を調べます。この作業の分量は依頼された日本語文の内容に
よって異なります。熟知している分野であれば専門用語の調査は少なくてすみますが、あまり
詳しく知らない分野の内容が扱われていれば、専門用語を調べるだけでなく、関連分野の英語
文献を何点か読み、その分野で一般的な文章作法や言語表現を確認します。
3. いよいよ翻訳
これらの準備がすめば英訳作業を開始します。
日本語の報告書を英訳する場合、まず日本語文のWordファイルのフォント、段落、ページレイ
アウト等を完成英訳文に合わせて変更します。その処理を施した日本語文のWordファイルに
英訳を書き込むのですが、その際、日本語の段落の下にその段落の英訳を書いていきます。
4. 推敲
英訳が済めば、英文を推敲します。推敲する点は、以下の通りです。
1) 訳語の最終検討
専門用語を調査した段階で訳語はほぼ決まりますが、翻訳の途中で訳語を再選定すること
があります。
2) 訳抜け
原文の内容が抜けていないか確認します。日本語と英語の単語の対応を確認するのではあ
りません。
3) 英訳文の文脈
英訳文を始めから終わりまで通して読んで、意味の伝わりにくい英文表現の有無や、論理
構成の不備がないかを確認します。
翻訳者の独り言10(2015年3月25日)
知っている人にはなんでもないことですが
Wordファイル中での表や図のレイアウト
グラフ、図面、データ表などを含むWordファイルを編集する際に、図の書式設定や表のプロパティを皆さんどのように指定しておられますか。
私は、図の書式設定では「レイアウト」を「背面」に設定します。
また、表のプロパティの設定においては「文字列の折り返し」を「なし」に設定します。
これらの設定を行うと、図や表が文書行数の増減に従って上下に移動しますので、図や表を含む文書の推敲で文字数が増減しても、図や表の位置変更を別に行う手間が省けます。
テキストボックスの書式設定
テキストボックスの「レイアウト」は、「前面」に設定すると便利なことが多くあります。例えば、注釈の加えられた図を含む日本語文を英訳する場合がそれに該当します。図に加えられた注釈部分の英訳をテキストボックスに記入し、日本語文で注釈が配置されていた位置におくと、テキストボックスが前面として表示されるので、下になっている日本語が隠れてくれます。
翻訳者の独り言9(2015年3月17日)
データ表の英訳
技術文書では、データを表にまとめたものがしばしば使用されます。
日本語の技術文書では、表中のデータ項目や試料名が漢字で書かれていることがよくありますが、これを英訳すると、漢字表記の場合よりもはるかに字数が多くなります。データをとった試料の個数が多いと、表の列数がそれに応じて多くなるので、項目や試料名を記入する列の幅をそれほど広くはできません。そのような場合に英訳した項目や試料名の字数が多いと困ったことになります。
この問題を解決するには、項目や試料名を略語で記載し、表のすぐ下にそれぞれの略語を注記します。略語の作り方は項目名が一単語の場合と複数の単語の場合とで異なります。項目名が一単語の場合には、その単語の最初の一音節分の文字またはその単語の語頭字と子音字だけ(3、4文字程度)を最初の文字を大文字にして連ねてピリオドを打ちます。Perf. (Performance 成績、特性)や、Emln. (Emulsion 乳化液)などはその例です。
項目名が複数の単語の場合にはそれらの単語の頭文字を大文字%